公開日:2013年12月4日
最終更新日:2018年10月9日
目次
- FileMaker WebDirectとFMPress Publisherの比較
- 結論
- 機能比較表
- FileMaker WebDirectおよびFMPress Publisherの両者が提供する機能
- FileMaker WebDirectのみの特長
- FMPress Publisherのみの特長
- FMPress Publisher 4でサポートされている主な機能
- FMPress Publisher 4(Proモード)でサポートされているスクリプト
- FMPress Publisher 4(Proモード)でボタンに割り当て可能な単一ステップ
- FMPress Publisher 4の制限事項
- FMPress Publisher 4でサポートされていない機能
- 関連リンク
FileMaker WebDirectとFMPress Publisherの比較
FileMaker Server 13で追加されたFileMaker WebDirectは、一切プログラミングすることなく、FileMaker Proで作成したレイアウトをWebブラウザー上に再現し、Webブラウザーからデータベースを直接使用できる革新的な機能です。
Webブラウザーを用いてサーバー上のデータベースを直接更新できるので、各端末にFileMaker ProやFileMaker Goをインストールする手間が不要であるため、導入・保守コストの削減に役立ちますが、FileMaker WebDirectを利用するには「FileMaker Server 接続ライセンス」(永続ライセンスのユーザライセンスは5ユーザで288,000円、永続ライセンスの同時接続ライセンスは5同時接続で882,000円)が必要になり、さらにウインドウのタブごとに接続ライセンスを使用してしまう実装である点に留意する必要があります。
この記事では、FileMaker Server 13以降で利用できるFileMaker WebDirectと、エミックが開発したFMPress Publisherのそれぞれの特長について比較します。今後のみなさんのソリューションの方向性を決める手がかりとして参考にしてください。
結論
FileMaker WebDirectは、接続に「FileMaker Server 接続ライセンス」が必要ですが、FileMaker Proで開発した結果を最大限Webブラウザーで再現します。
一方、FMPress Publisherは、FileMaker Proのレイアウトを再現するにあたり、可能な限りCSSを使用して動作を軽快にすることにフォーカスしており、軽くてモバイルOSにも向き、低スペックのスマートフォンでも動作します。オープンソースのフレームワーク「INTER-Mediator」を採用しており、機能拡張の際にはJavaScriptやPHPといったWeb標準技術を使用できます。さらに、FileMaker ServerのカスタムWeb公開機能を利用しているので、「FileMaker Server 接続ライセンス」は必要ありません。
上記のことから、FileMaker Proで開発した結果を最大限Webブラウザーで手軽に再現させたい場合にはFileMaker WebDirectを、公開Webサイトを運用したい場合および軽快さやコストを重視したWebアプリを構築したい場合にはFMPress Publisherをおすすめします。
機能比較表
機能/製品 | FileMaker WebDirect |
FMPress Publisher |
---|---|---|
ノンプログラミングでFileMaker Proのレイアウトを再現 | ○ | ○ |
FileMakerのネイティブアカウントを利用した認証 | ○ | ○ |
Webブラウザーによるデータ更新 | ○ | ○ |
iPadおよびAndroidタブレットのブラウザーに対応 | ○ | ○ |
iPhoneおよびAndroidスマートフォンをサポート | ○ | ○ |
オブジェクトフィールドへのファイルのアップロード | ○ | ○ |
リアルタイムにレイアウトとデータを反映(プッシュ対応) | ○ | - |
スクリプトのサポート | ○ | △ |
計算式、条件付き書式およびグラフをサポート | ○ | - |
レコードのインポート・エクスポートをサポート | ○ | - |
マルチファイルをサポート | ○ | - |
Firefoxをサポート | - | ○ |
Web標準技術を用いた機能拡張 | - | ○ |
FileMaker Server 接続ライセンス | 要 | 不要 |
FileMaker WebDirectおよび
FMPress Publisherの両者が提供する機能
ノンプログラミングでFileMaker Proのレイアウトを再現
FileMaker WebDirectおよびFMPress Publisherは共に、一切プログラミングすることなく、FileMaker Proで作成したレイアウトを、Webブラウザー上に再現することができます。HTMLやCSS、JavaScriptに関する知識は不要です。
Webブラウザーによるデータ更新が可能
FileMaker WebDirectおよびFMPress Publisherは共に、Webブラウザーでサーバー上のデータベースに接続できます。FileMaker GoやFileMaker Proを各端末にインストールする手間は不要です。
iPhoneおよびAndroidスマートフォンをサポート
FileMaker WebDirectおよびFMPress Publisherは共に、iPhoneおよびAndroidスマートフォンをサポートしています。なお、FMPress Publisherであれば、iPhone 5sやiPhone 6でも軽快に動作します(FileMaker WebDirectをiPhoneで利用する場合はiPhone 7以降が必要です)。
オブジェクトフィールドへのファイルのアップロード
FileMaker WebDirectおよびFMPress Publisher(Proモード)は共に、Webブラウザーを用いて画像ファイル等をオブジェクトフィールドに直接アップロードできます。
FileMakerのネイティブアカウントを利用した認証
FileMaker WebDirectおよびFMPress Publisherは共に、FileMakerのネイティブアカウントを利用した認証が可能です。なお、FMPress PublisherはFileMaker 16以降で利用できるOAuth認証には対応していません。
FileMaker WebDirectのみの特長
リアルタイムにレイアウトとデータを反映
FileMaker WebDirectでは、FileMaker ServerがWebブラウザーにデータをプッシュしてWebブラウザー内のデータを更新するので、FileMaker Proで行ったデータベースへの変更が即座に当該データベースに接続中のWebブラウザーに反映されます。
FMPress Publisherの場合は下記の動作となります。
- レイアウト:Webアプリを再生成(会員ページよりDDRをアップロードします)することで変更が反映されます。
- データ:FileMaker Pro側で変更したデータはWebアプリ側に反映されます。変更されたデータを確認するにはWebブラウザーをリロードする必要があります。また、Webアプリ側で変更したデータはFileMaker Pro側にすぐに反映されます。
スクリプトのサポート
FileMaker WebDirectは、WebDirect互換のスクリプトステップに対応しています。そのため、複雑なワークフローにも対応したWebアプリケーションを構築できます。
FMPress Publisher(Proモード)で実行可能なスクリプトステップはこちらのリストをご覧ください。
計算式、条件付き書式およびグラフをサポート
FileMaker WebDirectは、FileMaker Proの計算式や条件付き書式、グラフ機能を利用することができます。FMPress Publisherでは計算式は計算フィールド内でのみ利用可能です。条件付き書式、グラフ機能はサポートしていません。
レコードのインポート・エクスポートをサポート
FileMaker WebDirectは、FileMaker Proのレコードのインポート・エクスポートをサポートしています。FMPress Publisherはこれらの機能をサポートしていません。
マルチファイルをサポート
FileMaker WebDirectは、複数のファイルから構成されるデータベースソリューションに対応しています。FMPress Publisherは複数ファイルの動作検証を行っていません。
FMPress Publisherのみの特長
FileMaker Server 接続ライセンスは不要
FMPress Publisherは、FileMaker ServerのカスタムWeb公開機能を内部的に利用しているため、FileMaker WebDirectの利用に必要になる接続ライセンス(ユーザライセンスもしくは同時接続ライセンス)は不要です。そのため公開Webサイトの運用に適しています。
Firefoxをサポート
FMPress Publisherは、WebDirectでサポートされているWebブラウザー(Internet Explorer、Microsoft Edge、ChromeおよびSafari)以外にFirefoxもサポートしています。
Web標準技術を用いた機能拡張が可能
FMPress Publisherを利用すると、Webアプリケーションで使用するHTML、CSS、JavaScriptおよびPHPファイルが自動生成されます。オープンソースのWebアプリケーションフレームワーク「INTER-Mediator」を利用しており、JavaScriptおよびPHPで機能拡張およびカスタマイズが可能です。そのため一般的なWeb標準技術を用いて機能を拡張することもでき、Web開発でよく用いられるjQueryなどのライブラリを併用した開発が可能です。
FileMaker Pro Advancedが必須
FMPress Publisherは、Webアプリケーションへの変換にFileMaker Pro Advancedで出力可能なデータベースデザインレポート(DDR)ファイルが必要であるため、FileMaker Pro Advancedを購入して開発することが必須になります。
FMPress Publisher 4でサポートされている主な機能
- 暗黙的なレコード確定
- レコードの追加、および削除
- フィールドデータの追加と編集
- ボタンからスクリプトを実行(Proモードでは一部のスクリプトステップに対応)
- ボタンに割り当てたコマンド(単一ステップ)を実行
- レコードの検索状態やソート状態の保持
- 表示形式(フォーム形式、リスト表示)のサポート
- FileMaker Proのように利用できる検索モード
- ポータル
- レイアウトオブジェクトの自動サイズ変更オプションの上下左右のアンカー(上下ともにアンカーがない場合については未対応。また、下アンカーは一部のレイアウトオブジェクトのみ対応)
- ドロップダウンカレンダー
- オブジェクトフィールドへの画像/写真ファイルのアップロード
- FileMaker 13のレイアウトテーマ(一部サポート対象外のテーマがあります)
- FileMaker 13のスライドコントロール
- FileMaker 13のポップオーバー
- FileMaker 14のボタンバーおよびボタンアイコン
- FileMaker 15のマスク付き編集ボックス
FMPress Publisher 4(Proモード)でサポートされているスクリプト
ボタンに割り当てる「処理」の「スクリプト」からFileMaker Proのスクリプトを実行することが可能です。利用可能なスクリプトステップはカスタムWeb公開でサポートされているスクリプトステップに準拠します。なお、カスタムWeb公開で実行した場合とFileMaker Proで実行した場合では一部のスクリプトステップの挙動が異なる場合があります。
FMPress Publisher 4(Proモード)でボタンに割り当て可能な単一ステップ
ボタンに割り当てる「処理」の「単一ステップ」で利用可能なスクリプトステップは下記の通りです。
- スクリプト実行(すべてを終了、終了、再開、一時停止には対応していません)
- レイアウト切り替え(計算によるレイアウト名、計算によるレイアウト番号には対応していません)
- レコード/検索条件/ページへ移動(レコードの移動のみ可能です。計算式で指定には対応していません)
- 関連レコードへ移動(結果オプションの「新規ウインドウに表示」、「関連レコードのみを表示」の「現在の対象レコード内のすべてのレコードを照合」には対応していません)
- 新規レコード/検索条件(検索条件の作成はできません)
- レコード/検索条件削除(検索条件の削除はできません)
- レコードのソート解除
- 検索モードに切り替え(一時停止には対応していません)
- 全レコードを表示
- ツールバーの表示切り替え(ロックには対応していません)
- 表示方法の切り替え(表形式、表示切り替えには対応していません)
- レコードのソート(ダイアログありでの実行には対応していません)
- URLを開く(フィールド値の利用が可能です。計算式の利用はできません)
FMPress Publisher バージョン4の制限事項
現状、下記機能には制限がありますが、将来的に改善する予定です。
値一覧
- カスタム値、関連レコードを利用した値一覧が利用可能です(フィールドの値を利用した値一覧はポップアップメニューのみ利用可能です。ラジオボタン、チェックボックスでは利用できません)
- フィールドの値を利用した値一覧は多用すると動作が遅くなる場合があります
レイアウトのグループ
- ツールバーで表示できるレイアウトのグループは2階層目までをサポートしています
リレーションシップ
- リレーションシップはリレーション演算子が”=”の場合のみ動作を確認しています
フィールドオブジェクト
- ボディパートに設置する必要があります。ヘッダーやフッターに設置した場合は正しく動作しない場合があります
レイアウトオブジェクトの自動サイズ変更オプション
- 上下ともにアンカーがない場合については未対応です。また、下アンカーは一部のレイアウトオブジェクトのみ対応しています
非対応のレイアウトテーマ
- FileMaker 17のユニバーサルタッチ
- FileMaker 14のミニマリストとミニマリストタッチ
- FileMaker 13のアスパイアグループのエンライトンド印刷テーマ
- FileMaker 12のガラスグループおよび特殊グループ
レイアウトパート
- Proモード:ヘッダーパート、ボディパート、フッターパートのみ利用可能
- Expressモード:ボディパートのみ利用可能
FileMaker 14のフィールド内ラベル
- テキストフィールドのみに対応し、ブラウズモードでのみ表示可能です。
FMPress Publisher バージョン4でサポートされていない機能
- 管理機能全般
- パスワード変更
- レコードのインポート
- レコードのエクスポート
- レコードの保存/送信
- 繰り返しフィールド、集計フィールド、データの自動入力、ルックアップ、入力値の制限、グローバルフィールド、ふりがな
- リッチテキスト スタイル
- 表形式表示
- 複数ファイルのサポート
- 複数ウインドウのサポート
- レイアウトモード
- プレビューモード
- レコードのソートによるレコードの再配置
- レコードの複製
- 条件付き書式
- 計算式(計算フィールド内での利用は可能です)
- ポータルフィルタリング
- 他のレイアウトオブジェクトに覆い隠されているオブジェクトのクリック
- Web ビューア
- グラフ
- スクリプト(Proモードでは一部のスクリプトステップに対応しています)
- スクリプトトリガ
- カスタムメニュー
- FileMaker Pro ユーザと対象レコードを共有するためのスナップショットリンクの作成
- FileMaker 13のカスタムテーマ、スタイルおよびカスタムスタイル
- FileMaker 13のスワイプジェスチャ
- FileMaker 13の影とパディング
- FileMaker 13のタッチキーボードタイプ
- FileMaker 13で変更になったレコードやポータルの塗りつぶし
- FileMaker 13のテキストの基線
- FileMaker 13のレイアウトの背景(画像指定のみ未サポート)
- FileMaker 13のオブジェクト非表示機能
- FileMaker 14の上部および下部のナビゲーションパート
- FileMaker 14のオブジェクトコンポーネントスタイル
- FileMaker 16のOAuth認証
- FileMaker 16のレイアウトへの切り替えに使用するアニメーション指定
- FileMaker 16のカードウインドウスタイル
- FileMaker 17のマスタ/詳細レイアウト
関連リンク
- 技術仕様 | FileMaker Server 17(ファイルメーカー社)
- FileMaker Pro と FileMaker WebDirect の機能比較(FileMaker ナレッジベース)